こんにちは、pinealの徳原です。今回は「ロイヤルティ」という概念について考察したい。
ロイヤルティという概念がなぜ登場したのか?
デジタルマーケティング以前は、マーケティングにおいて企業がとりうる手法は、とにかく情報をシャワーのようにばらまいていくことだった。販売チャネルが小売に依存する形なので、その情報シャワーが購入にどのように影響したのか、という因果関係の把握は難しかった。デジタル技術の進歩によって、D2Cのような直販モデルが流行ったが、大手は小売への配慮からECへの注力はなかなか難しく、結局情報シャワー戦略を修正していくことはなかなか難しい。 そこで登場するのが、「ロイヤルティ」という概念である。
ロイヤルティ概念とは
顧客を「ロイヤルティ」という指標によってセグメント分けする。パレートの法則にのっとり、上位ロイヤルティ顧客が売上の過半数を占めるという基本思想のもと、低ロイヤル顧客群を中ロイヤル顧客群に、中ロイヤル顧客群を高ロイヤル顧客群に持っていくことを理想として、マイレージ施策やランクアップ施策など、各種施策をたくさん実行していく。
ロイヤルティという観点についての問題点
この「ロイヤルティ」という観点については2つの問題点があると思っている。
1.高ロイヤル顧客群と中ロイヤル顧客群は、ライフスタイルや行動が全く異なる場合がほとんど。ターゲットが異なるため、ランクアップという概念は幻想である
2.高ロイヤル顧客群が売上の過半数を占めるという考えや、ロイヤルティの向上が売上UPに寄与するなどが、数字による裏付けなく仮定されている。つまり、その戦略が正しいかどうかがわからない。
1つ目の問題点について
1)について、例えば調味料などを考えてみてほしい。まず、世帯人数によって日常使用する量が全く異なる。そして料理への関心度などによって、同一カテゴリの調味料が仮定内部に複数存在したりする。人をIDベースで切ると個人になっていまい、上記のような定性的かつ非常に重要な情報があいまいになってしまう。生活者のグラデーションに目を配ると、子供がいる仮定での消費量を増やすための施策、料理興味層の使用頻度を高めるため用途の分かれた複数のSKUを準備する、などの施策がありえる。しかしながら、購入数量やロイヤルティという指標のみでは生活者の実態を見失ってしまう。
2つ目の問題点について
2)について、NPSという概念をご存知だろうか。NPSとは「ネット・プロモーター・スコア」の略称で、顧客の推奨度を測る指標である。NPSの向上は売上UPに対する貢献度が高いとされている。NPSを中間的な指標として定義すると、例えばWEBシステムのデザインを抜本的に見直すとか、商品のパッケージを変えるとか、ユーザー向けのイベントをやるとか、そういった直接の売上貢献効果が見えない施策が実行できるようになります。ただ、これにはNPSを定義するまでに売上との相関性を示すための綿密な準備が必要となる。また、高ロイヤル顧客群が売上の過半数を占めるというのはよく言われる話ですが、これも業種業界によって異なるのでしっかりと自社の状況を確認する必要がある。とはいえ、ロイヤルティという指標が曖昧さを含むため、なかなかその証明は難しい。
まとめ
「ロイヤルティ」という言葉を使えば、お客様のためになる施策を実施できるようになるというメリットはあるが、上記2点のような不確実さを含むので、改めて自社が定義すると「ロイヤルティとは何か?」を考えてみてほしいと思う。